退職勧奨
退職勧奨とは、会社側から従業員に対して退職を促し、従業員自らが退職を選択する形になるよう、「肩たたき」をすることです。
会社側から一方的・強制的に退職を言い渡す「解雇」とは違い、社員の了解を得た上での退職となります。
退職の最終的判断は従業員がすることになるので、解雇とは別物であり、また、退職勧奨を受けた従業員が必ず退職に応じる必要もありません。
会社の経営悪化、従業員の能力不足、在職している事による他の従業員への影響(協調性に欠ける、パワハラ行為がある)等、
会社を存続させていく上で、従業員の雇用を継続していく事が困難と会社側から判断し、退職勧奨に至るケースが想定されます。
退職勧奨は、従業員を退職させる強制力を持っているわけではないので、会社が退職勧奨をすること事態に違法性はありません。
しかし、退職勧奨が脅迫行為と判断され、損害賠償請求の対象となった事案もあります。
下関商業高校事件(最高裁判所第1小法廷 昭和55年7月10日)では、市教育委員会Aが、退職勧奨に応じないXらに対し、
3~4ヵ月の間に11~13回の出頭を命じ退職勧奨を行い、退職勧奨に応じないのであれば、Xらが所属する組合の要求に応じないとか、
配転をほのめかす等、退職を強要する行為を行いました。
このAの行った退職勧奨は、多数回かつ長期にわたる執拗なものであり、退職の勧めとして許される限界を超える。
Xらが退職勧奨に応じないのであれば、配転をほのめかす等、Xらの精神的自由を侵害し、Xらは相当な精神的苦痛を受けたと容易に考えられるので、
損害賠償責任を負う、と判決を下しました。
退職勧奨を行う際は、まず退職が必要となる理由を細かく説明し、対象となる従業員に十分に納得をしてもらって下さい。
退職をしてもらいたい思いが先行して高圧的な態度になることや、無理やり退職をさせようとする行為は、上記でも記載した通り、
違法性になる可能性もあるので十分に注意し、感情的になることは絶対に避けて下さい。
また、退職勧奨の対象となる従業員に対して、退職金を上乗せするとか、転職先が決まるまで休職期間を与え、その間の賃金を補填するなど、
従業員に退職してもらう上での納得感を高める方法をとることが、トラブル回避に繋がります。
退職合意に至った場合は、退職合意書を作成し、従業員が退職に合意した事、双方で話し合った内容や退職する際に儲けた条件等を立証できる記録を残すことも、
トラブルを回避する一つとなります。
退職勧奨を余儀なくされる理由は様々であると思いますが、トラブルが発生する事のないよう慎重に手続きを進めることが望まれます。