退職代行はどこまでできるのか?
― 利用者と企業、それぞれが知っておくべきリスクと対応 ―
近年、「退職代行サービス」の利用が急増しています。
精神的な負担を減らし、退職のハードルを下げる手段として注目される一方で、退職代行業者が逮捕される事案も発生し、その適法性やリスクが改めて議論されています。
今回は、
・退職代行にできること/できないこと
・利用者側のリスク
・企業側のリスクと対応方法
・弁護士でない業者への対応可否
を実務視点で整理します。
退職代行に「できること」
退職代行の基本機能は、
「退職意思を本人に代わって伝えること」
です。
具体的には、
・退職意思の伝達/退職希望日の連絡/会社との連絡窓口代行/貸与物返却や書類受領の連絡調整
等といった範囲に限られます。
あくまで「連絡役」であり、法律行為の代理権があるわけではありません。
退職代行に「できないこと」
弁護士資格のない業者は、
以下を行えません。
❌ 有給消化の交渉
❌ 退職日の交渉
❌ 未払残業代請求
❌ 退職条件の交渉
❌ 損害賠償対応
これらは「法律事務」に該当し、非弁行為(弁護士法違反)となる可能性があります。
最近問題になっているのは、この一線を越えた業務を行う業者です。
【利用者側】退職代行を使うリスク
① 退職がスムーズに成立しない可能性
退職は意思表示で成立しますが、就業規則との関係で日程トラブルになることがあります。
② 権利主張が不十分になる
交渉できない業者では、
・有給消化
・未払賃金請求
が十分に行えない場合があります。
③ キャリアへの影響
業界が狭い場合、印象が残るケースもあります。バックグラウンド調査により、転職に不利になるケースも。
④ 費用対効果の問題
数万円支払っても、実質「伝達のみ」で終わることもあります。
【企業側】利用された場合のリスク
① 現場の混乱
突然の退職通知は、引継ぎや人員配置に影響します。
② 感情的対応によるリスク
「本人と話すまで認めない」
「退職は受理しない」
こうした対応は法的に不利になり得ます。
③ 職場環境の問題が表面化
退職代行利用の背景には、
・ハラスメント
・長時間労働
・相談しづらい職場風土
が潜んでいる場合もあります。
非弁業者からの申し出は拒否できるのか?
よくある質問です。
結論は、
交渉は拒否できるが、
退職意思の伝達自体は拒否できない
です。
▷ 退職意思の伝達は有効
退職は労働者の一方的意思表示です。
・本人の意思が明確
・会社に到達した
この2点が満たされれば、誰が伝えたかは本質ではありません。
「代行業者だから認めない」は通りにくいのが実務です。
▷ 交渉は拒否可能
非弁業者が
・有給交渉
・金銭請求
・条件調整
を行う場合、
「交渉には応じられない」
「本人または弁護士を通じて連絡を」
と伝えるのは適切対応です。
実務的な企業対応のポイント
現実的には、
①退職意思は受け止める
②交渉は拒否する
③本人に書面提出を依頼
④事務手続きを淡々と進める
これが最も安全です。感情的対応はトラブルを長引かせます。
退職代行は「悪」なのか?
退職代行自体が悪とは言えません。
・精神的に追い詰められている
・ハラスメント環境
・退職を切り出せない事情
こうしたケースでは救済手段にもなります。
ただし、
「便利だから使うもの」ではなく
「最終手段」
と考えるのが適切でしょう。
最後に
退職は労働者の正当な権利です。
本来は円満に進むのが理想です。
企業側は 直接言える職場づくり
働く側は 自分の権利の理解
これが重要です。
退職代行の増加は、職場関係の在り方を見直すサインとも言えます。
